肝いり政策・バイデノミクス不評　バイデン政権の「誤算」を探る

2024年の米大統領選を視野に、バイデン大統領が全米行脚を続けている。中間層の底上げを柱とする自らの経済政策「バイデノミクス」をアピールしているが、有権者の反応は冷たい状況だ。バイデン政権の「誤算」とは――。

選挙の目玉、早くも「格下げ」
　「バイデノミクス」は元々、米メディアがバイデン政権を批判的に論じる際に使っていたフレーズだ。バイデン氏はそれを逆手にとり、米中西部イリノイ州シカゴで6月に行った演説から自らの経済政策の名称として使い始めた。

　演説会のたびにバイデノミクスの成果を強調してきたが、有権者には響かず、支持が広がらない。米西部アリゾナ州の観光名所グランドキャニオン近くで8日に開いた演説会の中心は記録的な猛暑を受けた気候変動対策で、経済政策には触れずじまい。バイデノミクスが演説会の目玉から事実上、格下げになった格好だ。

　ホワイトハウスによると、バイデノミクスは米国への投資▽労働者の支援▽コスト抑制――を3本柱に掲げる。工場の海外移転などで空洞化した米国の製造業を国内投資で立て直し、雇用増加や医療費削減などで中間層の暮らしも支えていく構想だ。

　その実現に向け、バイデン政権は21年に総額1兆ドル（約143兆円）規模の大規模インフラ投資法を成立させた。昨夏には半導体、電気自動車（EV）の国内生産に巨額の補助金を投じる法律も施行している。

　保護主義的な産業政策は海外から強い批判を浴びてはいるが、政権発足以来、米国に5000億ドル（約71兆円）規模の民間投資を呼び込んだのも事実だ。雇用環境も好調で、7月の失業率は3・5％と歴史的な低水準となっている。

　しかし、政権の期待と自信とは裏腹にバイデノミクスの評価は上がらない。政府高官は「多くの指標は成功を示している」と現状に不満をもらす。

　米ブルームバーグ通信はコラムで「国民が改善を信じるには時間がかかる。経済成長とインフレ（物価上昇）率の鈍化が続けば、あと1年程度で結果が出るはずだ」とするものの、風向きが本当に変わるかは見通せず、近づく大統領選にも影響しかねない状況だ。

不支持6割、インフレ実感見誤る？
　誤算はメディアの調査結果にも表れている。米CNBCテレビが7月中旬に実施した調査では、…(以下有料版で，残り1447文字)

毎日新聞 2023/8/12 18:00（最終更新 8/12 18:00）
https://mainichi.jp/articles/20230810/k00/00m/020/180000cP