極刑言い渡しの瞬間「あんた、生涯、このこと後悔するよ」　“落日の工藤会”死刑判決の裏側

暴力団への締め付けが進んだ2000年代以降、北九州や周辺では凶悪事件が相次ぎ、市民は暴力の影におびえた。戦場兵器までが使われ、「修羅の国」と揶揄（やゆ）された。福岡県警は前例がない「工藤会壊滅作戦」に乗り出し、日本唯一の特定危険指定暴力団の上層部を軒並み逮捕し、法廷では検察と弁護側が全面対決した。西日本新聞の工藤会トップ裁判取材班は、20年以上にわたる取材の内容を新著「落日の工藤会」（KADOKAWA）にまとめた。その中から、壊滅作戦の舞台裏や法廷での攻防などを報告する。

「あんた、生涯、このこと後悔するよ」
　法廷で耳にすること自体が疑われる言葉だった。そう言った男の目は裁判長を見据えていたのだから恫喝（どうかつ）に等しかった。
　傍聴席ではざわめきが起きている。
　2021年8月24日、福岡地裁101号法廷。この言葉を言い捨てたのは、野村悟被告だ。
　一般市民を巻き込む凶悪な事件を何件も引き起こし、北九州市を恐怖に陥れた「黒幕」として立件された特定危険指定暴力団・工藤会の総裁である。
　この日行われた判決公判で、野村被告は極刑を告げられた。
　その直後にこの言葉を放ったのだ。傍聴席で息を?みながら判決を聞いていた人までを戦慄（せんりつ）させるひと言だったというしかない。
　工藤会総裁の野村被告と、ナンバー2であり会長の田上不美夫被告は、市民の襲撃を組員に指示したとして、殺人、組織犯罪処罰法違反の罪に問われていた。
　対象とされたのは四つの事件である。

(1)1998年2月の元漁協組合長射殺事件
(2)2012年4月の元福岡県警警部銃撃事件
(3)2013年1月の女性看護師刺傷事件
(4)2014年5月の歯科医師刺傷事件

　利権をめぐる脅迫や逆恨み、個人的怨恨（えんこん）が引き起こしたとみられる事件だ。それぞれ実行犯とされる工藤会系組員らは逮捕されて有罪判決が確定していたが、野村、田上両被告については長く罪に問えずにいた。
　暴力団による事件ではおよそ、そうなりやすい。

いかそ
https://news.yahoo.co.jp/articles/87515a04fd11192115ab666fe9da5e3e77523832