【アルゼンチン ロシア】出産目的？　ウクライナ侵攻で1万人のロシア人女性が渡った南米の国　制裁強まり将来を悲観か

出産目的？　ウクライナ侵攻で1万人のロシア人女性が渡った南米の国　制裁強まり将来を悲観か
東京新聞2023年2月26日 20時53分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/233401

退避先のアルゼンチンで本紙のオンライン取材に応えるエリセエフ氏

ウクライナ侵攻を続け、日米欧の制裁が強まるロシアの将来を悲観し、
アルゼンチンでの国籍取得を狙って現地で出産するロシア人女性が増えている。
アルゼンチン政府は今月に入って「不正入国」を理由に妊婦らを摘発。
ロシアも流出を防ぐ対策に動いている。

◆新生児の国籍目当てで不正入国
　AFP通信などによると今月上旬、
ブエノスアイレスの入管でロシア人の妊婦6人が「不法入国」として拘束された。
6人は観光ビザを持っていたが、旅行目的や滞在期間を説明できず、
出産によって新生児に自動的に付与されるアルゼンチン国籍を目当てとした渡航とみなされた。
　アルゼンチンでは生まれた子に続いて、親も一定条件を満たせばアルゼンチン国籍の取得が可能。
ロシア国籍者の入国を規制している欧州諸国も、アルゼンチンの旅券を持てばビザなしで渡航できる。
昨年1年で、妊婦らロシア人1万500人がアルゼンチンに到着したとされる。
　侵攻当初、抗議デモに参加し、昨年5月に弾圧を逃れてアルゼンチンに移住した
ロシアの人権保護団体OVDインフォの元弁護士デニス・エリセエフ氏（41）は
「ロシアと比べアルゼンチンには安定感がある。
　（侵攻した加害国である）ロシアの人々が差別を受けることもない」
とオンラインでの取材に語った。
エリセエフ氏の妻は半年前、アルゼンチンで出産、息子はアルゼンチン国籍を得た。

◆「父親」の身元確認せず
　アルゼンチンメディアによると、同国は昨年からロシア人妊婦の大量入国を問題視。
350人に聞き取ったところ、全員が仲介業者を経由し、
ビザなしで160カ国以上に渡航できるアルゼンチン旅券を目的に入国したと明かした。
女性らは「ロシア旅券には価値がない」と話したという。
　アルゼンチンでは、出生証明書に記載された「父親」の身元を確認する仕組みがない。
このため当局は、一部のロシア人女性が実際の父親と違う人物を載せ、
アルゼンチン旅券の不正取得を手助けしている疑いもあるとみて捜査している。
　外国に退避するロシア人は語学に堪能なIT技術者らが多く、
ロシア政府は「頭脳流出」の拡大を防ごうと躍起。
政府はロシアの決済サービスの利用者情報を情報機関に通知し、圧力を強める構え。
国外でテレワークをするロシア人の所得税率も引き上げる方針だ。
（モスクワ・小柳悠志、ニューヨーク・杉藤貴浩）