小４で足チョンパを決断した女の子、泣く 「なんで車なんかあるの！」

「二つの選択肢があります」。翌日、主治医はそう告げた。一つは全身の皮膚を集めて右足に移植する手術。もう一つが足首を切断する手術だった。皮膚の移植手術は足は残せるものの、右足を使って歩くことは、もうできないという。皮膚をはがした部分には痕が残ることも気になった。

走ることが好きだった。学校ではリレーの選手に選ばれてきた。このまま足を残しても、走れない――。

主治医のいる前で朱月さんは「どっちを選んでもいいんだよ」と問いかけた。花さんはすぐに答えた。

「元の生活に戻れるかもしれないなら、切ります」

手術が無事終わり、翌10月に義足が届いた。義足をつけて平行棒を使った歩行練習が始まった。2カ月で退院でき、松葉杖をついて授業に出た。昼休み、体育館で鬼ごっこをする同級生らを端っこで眺めた。

「また走れるよね、大丈夫だよね……」。時折、不安な気持ちになった。

うれしいこともあった。その年の11月、リオデジャネイロパラリンピック陸上女子400メートルの銅メダリストで、隣町の七飯（ななえ）町出身の辻沙絵さんの講演会を聞きに行った。その日、花さんの事故を知った辻さんと電話で話した。「できないことは何もないよ」。辻さんの言葉が花さんの背中を押した。

6年生の運動会まで週1回、45分のリハビリを続けると決めた。両親はスポーツ用の義足を買ってくれた。5年生の終わりころには、事故前の50メートル走のタイムと0・01秒しか変わらないまでになった。

21年5月、最後の運動会。6年の組対抗リレー競走。「そういえば、みんなに義足をちゃんと見せるのは初めてかも」。バトンを受け取り駆けだした。「がんばれ」。友だちの声援が聞こえた。誰も義足を気にしていないみたい。グラウンド半周は、あっという間だった。

今、花さんは中学1年生だ。卓球部に所属し、週3～4日、練習に励んでいる。

車への恐怖が消えたわけではない。

入院中の19年9月21日。初めて外出を許可された。車いすを朱月さんに押してもらって交差点にさしかかった。勢いよく横切る車を見て、思わず叫んだ。

「なんで車あるの。この世からなくなればいいのに」

事故を起こしたトラック運転手は過失運転致傷罪で禁錮1年半、執行猶予5年の判決を受けた。交通違反歴が複数回あり、花さんの事故の前にも人身事故を起こしていた。雇い主の会社からはいまだにあらたまった謝罪がない。朱月さんは「車ってそんなに偉いのか。社会は事故を減らすシステム作りに努めてほしい」と話す。

朱月さんは21年10月、道警函館中央署に要望書を出した。花さんが事故に遭った交差点に、「歩車分離式信号」を設置してほしいというものだ。

花さんは言う。

「私はまた走れるようになったから、ラッキーな方かもしない。けれど、みんなが同じ目に遭ってほしくない」（平岡春人）

かわいそうなのは抜ける

ジャップの道がまず頭おかしい
狭いし電柱邪魔だし
意識が散漫になるわ
国道以外は軽自動車用道路でしかない