乱獲で世界中のヤシガニが屠られる中、沖縄海洋博公園に多数生息していることが明らかに

乱獲で世界中で減るヤシガニ　沖縄の海洋博公園に1000匹　赤道近くの島々並み　こんなに多い理由は？

　沖縄美ら島財団総合研究センター（沖縄県本部町）と国立研究開発法人物質・材料研究機構（茨城県）の研究グループはこのほど、本部町の海洋博公園に約千匹のヤシガニが生息していると明らかにした。
「北限域という厳しい環境で生息しているが、比較的良好な状態で維持されている。開園以来、動物の捕獲禁止や生息域の海岸樹林が保たれていることで、個体群が守られたと考えられる」と分析している。

　ヤシガニは陸に生息する最大の甲殻類。乱獲や生息域の消失などで、世界的に減少している。

　これまでの海外の研究では、ヤシガニを直接観察することで生息数などを推定していたが、個体数が季節によって変動するなど、数のばらつきが課題だった。

　一方、研究グループは２００６～１９年の１４年間、園内のヤシガニ個体群の生息実態調査を３５０回以上行い、５６０組の再捕獲データを収集、解析。より精度の高い研究結果が得られたという。再捕獲データを用いて個体数を推定するのは世界初という。

　研究では、園内に生息するヤシガニの数は９５５～１１５３個体と推定。生息密度は１ヘクタール当たり約９０個体となり、ヤシガニ分布の中心部となる赤道付近の島々と遜色ないという。

　ヤシガニの成長は非常に遅く、一般的な食用サイズ（体重約５００グラム）に達するのにオスで１０年以上、メスで２５年以上かかることも分かった。寿命は雄雌とも約５０年と推定された。

　代表研究者の沖縄美ら島財団総合研究センター動物研究室の岡慎一郎室長は「海洋博公園の事例や評価方法は、ヤシガニ保全条例で保護されている宮古・八重山地方でも活用できると思う」と期待した。

　研究成果は、日本甲殻類学会の国際誌「Ｃｒｕｓｔａｃｅａｎ　Ｒｅｓｅａｒｃｈ」に掲載された。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/888007