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都議選で危機感、「追加対策を」　与党が強める歳出圧力

自民、窮状打開へ経済対策
　自民、公明両党が政府に対して歳出圧力を強めている。東京都議選で自公が目標としていた過半数に届かなかったことなどを受け、次期衆院選への危機感を募らせているためだ。大規模な追加経済対策を打ち出すことで窮状を打開する狙いだが、政府はいまのところ補正予算案の編成には慎重姿勢を見せている。

　14日に自民党本部で開かれた党経済成長戦略本部。会合では、東京都への緊急事態宣言発出などを受け、飲食店やイベント中止に対する支援拡充を求める声が相次いだ。

　党内では、大規模な財政出動論が強まっている。自民の下村博文政調会長は12日夜のBSテレビ東京の番組でコロナ禍で苦しい生活を強いられている人が多い現状を踏まえ、「大胆な追加経済対策は必要だ。金額ありきということじゃなくて、30兆円近いものというのもあり得ると思いますが、それ以上もあるかもしれない」と述べた。

二階氏の発言は　安倍前首相も
　下村氏が目玉政策の一つに掲げるのが、住民税非課税世帯など生活が苦しい人を対象にした1人あたり10万円の給付だ。「あくまでもまだ私の個人的な見解」とするが、自民内からも同様の意見が出ている。

　経済対策を求める声があがるのは、昨年度の税収が見込みより5・7兆円増えたことも一因となっている。二階俊博幹事長は8日、「思い切った対策を講ずるべきだと国民も期待している。30兆円に近いものを掲げていかなきゃいけない」と指摘。安倍晋三前首相も10日に新潟県の講演で「昨年は政府と日本銀行が連合軍で200兆円という対策費をうった。いまの状況であれば、もう1回、もう2回でもいい、大きなショットを出して、国民の生活を支えていく対策が必要だ」と主張した。

公明は「新・Ｇｏ　Ｔｏ　キャンペーン」
　公明も働きかけを強めている。山口那津男代表は12日、東京都内での講演で、「コロナを克服し、その後も視野に入れた経済対策を考えている。選挙の前に、もちろん経済対策は掲げたい」と述べた。公明は次期衆院選の公約の基礎となる「政策パンフレット」を8日に公表。コロナの感染収束を前提として、観光・飲食産業を支援する「新・Go　To　キャンペーン」を打ち出したほか、出産育児一時金（原則42万円）の増額などを掲げている。

　こうした歳出圧力の背景にあるのは、東京都議選での自民の「敗北」だ。

　新型コロナ対応への不満から、獲得議席数は予想を大きく下回る33議席となり、過去2番目に少ない結果となった。さらにここにきて飲食店の酒類提供停止をめぐり、西村康稔経済再生相が金融機関や販売業者を通じた飲食店への「働きかけ」を一時打ち出したことで、苦境にあえぐ業界団体からの反発を招いた。政権への逆風が一層強まるなか、閣僚経験者は「大規模な経済対策をうたないと衆院選は大変なことになる」と焦りを隠さない。

鈍い官邸　その背景には
　一方で、官邸側の動きは鈍い。現時点で菅義偉首相は追加経済対策のとりまとめを指示していない。首相は周囲に「まずはワクチンだ」と述べ、早期の経済対策のとりまとめには慎重姿勢を示しているという。

　この背景には、臨時国会をめぐる「神経戦」がある。秋の臨時国会での衆院解散シナリオを描く官邸側に対し、野党は早期の臨時国会召集を要求し、政府のコロナ対応を議論するよう求めている。

　政府が早く経済対策を具体化すれば、野党から国会審議を求める圧力が強まる可能性があり、解散シナリオも崩れかねない。自民幹部は「首相は解散権を縛られるのを嫌がっている」と話す。