【アメリカ】新型肺炎の低リスク強調　トランプ氏が警告する衛生当局・議会と対立

トランプ米大統領は２６日夜（日本時間２７日午前）、ホワイトハウスで記者会見し、新型コロナウイルスの米国民へのリスクは非常に低いと強調した。しかし、衛生当局は米国内の感染拡大の可能性を警告。議会からも水際対策の強化を求める声が出ており、対策が経済に悪影響を与えかねないと懸念する政権側と綱引きが続きそうだ。米株式相場の先行きに対しても悲観的な見方が強まっている。

再選への悪影響懸念

　大統領はペンス副大統領らと記者会見に臨み、「われわれの取り組みが奏功し、国民へのリスクは非常に低い」と述べる一方で、「悪化する可能性はある。大幅に悪化する可能性もあるが、避けられない事態などない」とも語った。ペンス副大統領を対策の責任者に任命した。

共和、民主両党議員はトランプ政権が議会に要請した新型ウイルス対策費では不十分だとし、一部議員からは、感染が広がっている国々からの一段と広範な入国制限など、水際対策強化を政権に求める声も上がっている。

　これに対し、ホワイトハウスでは、そうした措置が米経済、さらにはトランプ大統領の再選キャンペーンに悪影響を及ぼすのではないかとの懸念がある。

　政府として都市の封鎖などの措置も視野に入れているかとの質問にトランプ大統領は、「はるかに大規模な計画も立てているが、それが必要になるとは考えていない」と答えた。

　しかし、衛生当局者らは米国内の感染拡大の可能性を警告している。米疾病対策センター（ＣＤＣ）は２６日、中国への渡航歴がなく、確認された感染源と接触もない新型ウイルスの症例を初めて確認したと発表。記者会見に先立ち、米食品医薬品局（ＦＤＡ）生物製剤評価研究センター（ＣＢＥＲ）のピーター・マークス所長はインタビューに応じ、「どう見てもパンデミック（世界的な大流行）の瀬戸際にあると言っていいだろう」と発言。「それが間違いなく起きるかと言えばノーだが、重大な懸念がある」と述べた。

　米国以外でも感染は拡大している。世界保健機関（ＷＨＯ）は２６日、直近２４時間で確認された新型ウイルス感染者のうち、中国以外の割合が初めて中国を上回ったことを明らかにした。パキスタンやブラジルなどで新型ウイルス感染が確認された。中南米での感染確認は初めて。国際通貨基金（ＩＭＦ）と世界銀行は２６日、４月に予定している春季会合の規模と範囲を数日中に見直すと発表した。

　米株は５営業日続落

　こうした中、米株式相場は２６日、５営業日続落となり、市場関係者らは先行きに対し厳しい見方をしている。

　シティグループはリポートで、米株式指標Ｓ＆Ｐ５００種が現在の水準からさらに１２％低い２７３０に下落するシナリオに言及。そうなれば２月１９日に付けた過去最高値から２０％下落という弱気相場入りの瀬戸際となる。同社は「米金融当局を行動に踏み切らせるには金融状況の一層の引き締まりが必要になるだろう」として政策対応の兆候を待つ考えを示した。

　ゴールドマン・サックスもリポートで「世界経済成長の安定化がさらに明瞭にならない限り、戦術的にリスクを増やすのは時期尚早と思われる。世界経済成長が弱い上、新型ウイルスの影響が長引き、金融緩和と財政緩和の余地も乏しいだけに、下げ相場がさらに長期化するリスクは残る」と説明した。（ブルームバーグ　Ａｄｖｅｉｔｈ　Ｎａｉｒ、Ｊｏｒｄａｎ　Ｆａｂｉａｎ）

2020.2.28 15:00
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200228/mcb2002281500030-n1.htm