「個人的なことは政治的なこと」巨大な刺しゅうバナーで訴える「政治的な手芸部」…「フェミニスト手芸グループ山姥」他

「個人的なことは政治的なこと」巨大な刺しゅうバナーで訴える「政治的な手芸部」 ｜ 47NEWS
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2025/05/20
Published　2025/05/20 09:30 (JST)
Updated　2025/05/20 15:57 (JST)

２０２５年のバナー「抵抗」

　生存、人権、尊厳、抵抗…。縦１６０センチの大きな刺しゅうのバナーから、メッセージが浮かび上がる。個人的な趣味とされがちな手芸を用いて、デモのバナーを制作する「政治的な手芸部」プロジェクトの作品だ。例年３月８日の国際女性デーに、ジェンダーに基づく暴力や差別に反対する人々が東京・渋谷の街を歩く「ウィメンズマーチ東京」で掲げられている。

　毎年、テーマを決めてバナーを作る。今年は「抵抗」だ。交流サイト（ＳＮＳ）などでゆるやかにつながった１２２人が参加した。年齢も職業も住む場所もさまざまだ。バナーに目を凝らすと、参加者一人一人が日々の暮らしで抱いたもやもや、切なる願いなどを、１０センチ四方の布に、色とりどりの糸や素材で表現しているのが分かる。大きな布に縫い合わされて一つの作品を成し、力強く訴えかけてきた。（共同通信＝小川美沙）

▽ルールに縛られないあらがい方への敬意

　「政治的な手芸部」は、フェミニズムをテーマに、編み物や刺しゅう作品による「フェミニスト手芸グループ山姥（やまんば）」のかんなさん、マルリナさんらが呼びかけたプロジェクトだ。

　山姥が活動を始めたのは２０１９年。独特のグループ名に込めた思いは深い。人々に恐れられてきた山姥とは、ルールや、男性が望む女性の姿に縛られずに闘ってきた女性では―。「そんな『あらがい方』を見習いたいと思った」（かんなさん）

▽きっかけはイギリスの抗議活動

　バナー作りのきっかけは、２０１８年のＸ（旧ツイッター）に投稿されたある写真だ。英国で、トランプ米大統領訪英に抗議する人々が、編み物などで作り上げた大きなバナーを手に、街を練り歩いていた。

　手芸は個人的な趣味とされがち。それでも、縫いながら、編みながら考えたことをメッセージとして社会に伝えるアイデアに、かんなさんは「共感した」という。フェミニズムのスローガンである「個人的なことは政治的なことである」にも一致すると考えた。

　バナーのテーマは２０２２年が「人権」、２０２３年は「生存」、２０２４年は「尊厳」。かんなさんは、２０２５年のテーマに「抵抗」を選んだ理由を「暴力や差別、不正義を決して受け入れず、怒り、あらがうために、一人一人の小さな抵抗を持ち寄るバナーにしたかった」と説明する。

　制作の参加者は年々増え、ここ数年は１００人超になった。完成したバナーは「ＳＲＨＲ（性と生殖に関する健康と権利）」、旧優生保護法などの問題を巡る集会やデモで掲げられた。ＺＩＮＥ（ジン）と呼ばれる冊子も毎年発行し、バナー制作の参加者が一枚一枚の作品に込めた思いを紹介している。

▽一針一針、進むしか

関東地方に住むｍａｃｃａさんは「政治的な手芸部」の中心メンバーで、毎年参加している。今年のバナー用に手がけた２枚のうち１枚は、パレスチナ刺しゅうの伝統的な「羽と月／テント」をモチーフにした作品だ。戦闘が続くパレスチナで、刺しゅうは生活に彩りをもたらす文化だ。住む場所を追われたパレスチナの人々が「いち早く解放され、謝罪や補償を受けてほしい」という願いを込めた。
　
（中略）

▽生み出す力

バナーは、各地の書店や、男女共同参画センターなどで展示されてきた。東京・世田谷区の書店「エトセトラブックス」でも、２０２２年以降のバナーを毎年一定期間、店内に展示している。スタッフのほたて帯子さんは「パワフルですごい存在感。見ていると力がみなぎる」と話す。

　バナーの中の一つ一つの作品に見入ると、ポジティブなメッセージだけではなく「怒りや、普段は表にしづらい感情もこもっている」ことに気付く。反戦のメッセージも複数あり、世界各地で紛争が続く状況に「危機感が伝わってくる」。

　エトセトラブックスでは、手芸が女性たちに与える影響などについて書かれた本も複数扱っている。昨年は、「政治的な手芸部」と一緒に手芸のワークショップも開催した。「手仕事を持ち寄ることはこれまでも、女性たちが集い、話し、新しいものを作り出す理由にもなってきた。『政治』とは接続されていると思う」

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