いにしえのパチ●コ店、修羅の世界だった

筆者の知り合いである元パチプロのAが店に通い始めた1980年代後半は、上記の様子とはやや異なっていたという。Aによると、当時の店員は皆パンチパーマでいつもタバコを吸っており、閉店時に「蛍の光」が流れる以外は玉やコインの音だけが聞こえる空間であったという。現在は1000台以上の台を置く大型店も多いが、その頃は1店舗ごとの規模も小さかった。また、開店前の抽選はまだなく、客は早く店に来た順に並んで入店していた。
加えて、彼は当時のパチプロについて次のように話した。

説明するとね、あの、理解できるかどうかわかんないんだけど、戸塚に何軒も店があるんだ。で、だいたい１店舗に1人くらい「ヌシ」みたいなのがいて。で、その人の畑は、基本荒らさないっていうプロ同士のたぶん……なんて言うんだろうな。まあ、しっかりしたルールじゃないけど、一応決まり事みたいのがあったんだと思うんだよ。［2019/3/29］

Aの近所の店にいた「ヌシ」のようなパチプロは、毎日その店におり、いつも朝一番に良い台をすばやく確保して、2万円ほど稼ぐと夕方には帰って行く人であった。また、よそからプロらしき人がやってくると「ボコボコにして店から連れ出す」という、強い縄張り意識を持った人でもあったという。
Aは筆者に、当時は「（そういう人が）どこにでもいたよ」「そういう世界だったんだ」と語った。

松崎かさね「パチ●コ店における「ヌシ」の品格に関する一考察」『文化人類学研究』(2２巻　2021年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/wsca/22/0/22_106/_article/-char/ja