野田佳彦「安倍晋三を「神格化」する議員の発言や報道が気になる。虎の威を借るような政治家や識者があまりにも目につく」

　◆岸田首相は宏池会（岸田派）出身だ。政策パッケージでは財源の裏付けをしっかり示し、財政に責任を持つ態度を取るのが本来の宏池会の姿ではないのか。防衛費増額も異次元の少子化対策も財源論は先送りだ。メニューばかり出してくるが、料金は書いていない。書いてあっても「時価」だ。安倍さんは当面の増税は不要だと主張していた。岸田首相も安倍さんの言葉をうまく使って、財源論をあいまいにしているように感じる。

　◆外交で長期政権はプラスだ。特に日米関係でオバマ、トランプ両大統領と深く付き合えたことは、なかなかできることではなく、これは光として見るべきだ。一方でロシア外交では2016年に8項目の経済協力プランに合意し、北方領土での共同経済活動まで協議してプーチン大統領にサービスしようとしたが、結局、石ころ一つ返ってこない。北方領土について「4島一括返還」から「歯舞群島・色丹島の2島返還」へと発射台を低くしてしまった。これは間違いなく影だった。経済では、アベノミクスで、日銀が物価上昇率2％を目標とするなど明るい空気をつくった。株価は上がったが、生活実感として景気がよくなったとは思えない。トリクルダウンは起こらず格差が拡大し、副作用の方が大きく、検証しなければならない。岸田首相は安倍さんのカラーから抜け出せないでいる。
(略)