処理水放出、政府「地ならし」大詰め　「今月下旬-来月前半」を検討、閣僚相次ぎ東北訪問

東京電力福島第１原発にたまる処理水の海洋放出に向けた政府の「地ならし」が大詰めを迎えている。理解醸成を図るため、関係閣僚が相次いで東北を訪問。「春から夏ごろ」としていた放出開始時期を「８月下旬から９月前半」とする方向で検討に入った。一方、漁業者は「放出ありき」の政府の姿勢やスケジュール感に不満を募らせていて、両者の温度差が鮮明になっている。

不満募らす漁業者、温度差鮮明
　８日、いわき市であった福島県漁連と渡辺博道復興相との意見交換会。野崎哲会長は反対の立場を重ねて示し「慎重な判断をお願いしたい」とくぎを刺した。

　会合後、野崎会長は漁業者と乖離（かいり）する政府の認識に苦言を呈した。前日、岸田文雄首相が「地元と対話を重ね、漁業者との信頼関係は少しずつ深まっている」と語ったことに触れ「何を捉えているのか分からない」と大きく首をかしげた。

　首相の「信頼」発言が飛び出した背景には、関係閣僚が漁業者との対話を加速させていることがある。

　処理水を巡る経過と関係閣僚の動きは表の通り。東北入りは、国際原子力機関（ＩＡＥＡ）が放出計画の安全性を担保する包括報告書を公表した７月４日前後に活発化した。渡辺復興相は就任後初めて、岩手、宮城、福島３県の漁業関係者と意見交換した。

　西村康稔経済産業相は７月中に宮城、福島両県を計３回訪問し、全国漁業協同組合連合会（全漁連）にも足を運んだ。経産省の担当者は「対話の頻度は高くなっている。大臣が行けない場合は事務方がフォローし、なるべく多く説明する機会を設けている」と話す。

　岸田首相が海洋放出にゴーサインを出す時期を巡っては、今月１７日からの訪米時に予定する日韓首脳会談で、韓国の尹錫悦（ユンソンニョル）大統領に安全性を説明。２０日に帰国後、関係閣僚会議で具体的に決定するとみられる。

　放出開始へ着々と外堀を埋めていく政府に対し、漁業者は戸惑いを隠せない。

　８日、青森県漁連が政府と東電を招いて青森市内で開いた説明会。中国や香港が日本から輸入する水産物の放射性物質検査を強化しているとして「既に（風評の）実害が出ている」と不満の声が漏れた。

　ナマコを主力商品とする川内町漁協（むつ市）の今進組合長は数日前、香港側が５～７％の値下げを要求してきていると、取引先から告げられたという。「風評がどこまで広がるか分からない」と憤った。

　青森県漁連の二木春美会長は「放出開始を先延ばししてでも漁業者の理解を得た方がいい」と強調する。宮城県漁協の寺沢春彦組合長は「理解の醸成が進まない中でも、政府が行動（放出）に移すことも視野に入れながら、対応しなければならない」と警戒する。

河北新報　2023年8月16日 6:00
https://kahoku.news/articles/20230815khn000068.html

政府自民や官僚含めスクラム組んで凄かったわ