【西日本新聞】コロナ死者急増　医療崩壊を防ぐ対策急げ

新型コロナウイルスの死者数が急増している。1日当たり500人を超え、最多を更新する日が続く。
感染者が国内で初めて確認されてから、明日で3年になる。6万人を超えた累計死者数のうち、約1万人はこの1カ月に集中している。

死者の大半は高齢者だ。初期の感染拡大期によく見られた重度の肺炎とは異なり、持病が悪化し、重症病床に入ることなく亡くなる人が多いという。
コロナがなければ失われなかった命だろう。

政府が昨秋に感染者の全数報告を見直したため、感染状況の詳しい把握は難しくなった。
死者数から推測すると、現下の「第8波」は過去最大の感染拡大期とみられる。

救急車の搬送先がすぐに決まらない件数は、昨夏の「第7波」を超えた。
コロナ以外の疾患の治療にも影響が出ている。病院や高齢者施設では集団感染が相次ぎ、現場は疲弊している。

九州は人口当たりの感染者数が全国平均より多く、増加率も高い傾向にある。
病床使用率は8割に迫る県が多い。各県とも悪化が続けば「医療ひっ迫防止対策強化宣言」を出し、さらなる拡大防止策を迫られる可能性がある。

政府は新型コロナの感染症法上の位置付けについて「2類相当」から季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げる方向で検討している。
社会経済活動への制約をなくし、対応できる医療機関を増やす狙いだ。

検討すること自体は妥当だが心配もある。「感染対策はもういらない」といった誤解を招かないだろうか。

政府は国民に厳しい実態を丁寧に説明し、感染防止を改めて呼びかけるべきだ。
ワクチンの接種率も伸び悩んでいる。感染を抑えなくてはならない状況を社会全体で共有したい。

出入国の水際対策が緩和され、全国旅行支援も再開された。人々の接触機会が増えているからこそ、警戒は緩められない。

この3年間で医療提供体制は拡充されたとはいえ、感染者の増加に追い付いていない現状がある。

医療崩壊は何としても避けねばならない。従事する人を確保し、命を守ることを最優先した体制の再構築を急ぎたい。

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