ウクライナ国防相「防空システム到着」　米国が供与

【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナのレズニコフ国防相は7日、地対空ミサイルシステム「NASAMS」が到着したと明らかにした。NASAMSは米国とノルウェーが開発した中距離のミサイル防衛システムで、米国が供与を決めていた。ウクライナ政府は同日、航空エンジン製造など5社を国有化したと発表した。

NASAMSは欧州や中東など10カ国超で配備されており、米首都ワシントンの防衛にも使われている。ウクライナは旧ソ連製の地対空ミサイルシステムを運用しており、米欧のシステムを導入することで防空態勢を整える。

ロシア軍はロシア本土とウクライナ南部クリミア半島をつなぐ橋が爆発した10月上旬以降、ミサイルや無人機（ドローン）を使って発電所などウクライナの電力インフラを攻撃している。ウクライナ側はこれらの多くの撃墜に成功しているものの、一部はインフラを破壊し停電を引き起こしている。

レズニコフ氏はツイッターへの投稿で「NASAMSなどの兵器はウクライナ軍を格段に強くし、我々の空を安全にする」とし、防空能力強化に期待を示した。ブリンケン米国務長官は10月に、NASAMS2基を11月にもウクライナに引き渡す予定だと明らかにしていた。

一方、ウクライナ政府は7日、航空機エンジンメーカーやエネルギー企業など5社を国有化したと明らかにした。同国のゼレンスキー大統領はSNS（交流サイト）のテレグラムで「（国有化は）国防部門の緊急ニーズに役立つ。国土と国民の解放のためにあらゆる力を向けなければならない」と強調した。

国有化したのは航空エンジン製造「モトール・シーチ」など。モトール・シーチは2014年にロシアがクリミア半島を一方的に併合した後にロシアとウクライナの関係が悪化するなかで、中国企業が買収に動いた経緯がある。軍事技術の流出を恐れた米国が反対を表明し、21年にウクライナ政府が買収を阻止していた。

日本経済新聞　2022年11月8日 4:57
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07CWO0X01C22A1000000/