ECBラガルド総裁「欧州は不況でない」　黒田日銀総裁金融緩和継続表明

ECBラガルド総裁「欧州は不況でない」　雇用の強さ強調

【ワシントン=斉藤雄太】欧州中央銀行（ECB）のラガルド総裁は12日、訪問先の米首都ワシントンで「欧州は不況入りしていない」と語った。過去最低水準にとどまる失業率など雇用情勢の強さを強調した。ロシアのウクライナ侵攻で生じたエネルギー価格の高騰により、市場では欧州がすでに景気後退局面にあるとの見方も出るなか、足元の景気の底堅さを訴えた。

国際金融協会（IIF）主催の対談形式のイベントで語った。労働参加率の改善も踏まえ「雇用情勢がこれほどポジティブになったことはない」と話す一方、米国などで懸念されているような賃金と物価の循環的な上昇については「欧州ではあまり現れていない」と指摘した。一方でガス価格の高騰や主要な輸出先である中国の景気減速などには警戒感を示した。ECB自体、2023年の成長率は大幅な鈍化を見込んでいる。

インフレ抑制に向けた金融政策では、伝統的な政策金利の引き上げが「最も効果的かつ適切で、実際によく機能するツールだ」と述べた。ECBは9月の理事会で0.75%の大幅利上げを実施し、今後も利上げを急ぐ構えだ。ラガルド総裁は新型コロナウイルス対応で買い入れた資産について、いつからどのような方法で減らすか「議論を始めており、今後も継続する」とも語ったが、まずは利上げ中心の金融引き締めを進める考えを示した。

同じイベントでラガルド総裁に先駆けて登壇した日銀の黒田東彦総裁は、金融緩和を続ける方針を重ねて示した。日本経済のコロナ禍からの回復やエネルギー・食品価格を除くベースの物価上昇率がいずれも弱いことを挙げ「日本の金融政策と（引き締めを急ぐ）米欧の違いは、経済と物価情勢の違いを反映したものだ」と主張した。

エネルギー高などの一時的な要因が抜けた後も「2%の物価上昇目標を安定的かつ持続可能な形で達成するには賃金の上昇が必要だ」と指摘した。自身が主導してきた過去10年近くにわたる大規模緩和が景気回復やデフレからの脱却に大きな役割を果たしたとしつつ、目標達成に向けた緩和継続はなお必要との考えを示した。

円安の経済への影響については輸出の促進や海外での企業収益拡大、設備投資の後押しといったプラス面を強調する一方、円安が逆風になる業種もあると言及。急速な為替変動には警戒感を示し、「為替動向と経済への影響は注意深くみている」と語った。

日本経済新聞　2022年10月13日 5:49 (2022年10月13日 6:21更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN12ED50S2A011C2000000/