識者「ロシアのウクライナへの侵攻に合わせて中国が台湾に侵攻しても米軍は出てこないだろう。理由は」

習近平の“笑顔”が消える…「台湾侵攻」後の中国を待ち受ける米「逆襲の経済制裁」

12/10(金) 7:02配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/90dde4d7723e9701550ff0c5d7748339c25dedd2?page=1

　ロシアがウクライナとの国境付近に戦車などを含めた重装備の部隊を展開し、緊張が高まっている。

米国のジョー・バイデン大統領は12月7日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談したが、緊張緩和のメドは立っていない。

中国と連動するのだろうか。

　今回の事態は、米紙ワシントン・ポストの報道で明らかになった。

同紙は3日、ロシアが「来年早々にも、最大で175000人の部隊を動員して、ウクライナへの侵攻を計画している」と、情報機関から提供された衛星写真付きで報じた。

そこには、国境付近の4カ所に大部隊を展開したロシア軍の姿があった。

　ロシアは2014年にウクライナのクリミア半島に侵攻し、実効支配している。

以来、ウクライナ東部でも、ロシアの支援を受けた親ロ武装勢力とウクライナ政府軍の戦闘が続いていた。

今回の部隊配置は、クリミア侵攻の再来を思わせ、欧米に衝撃を与えている。

　この事態を受けて、バイデン氏は7日のオンライン会談で、プーチン氏に対して「ウクライナに侵攻すれば、米国と欧州の同盟国は強力な経済制裁で対抗する」と警告した。

だが、プーチン氏は「挑発しているのはNATO軍」と反論して、取り合わなかった。

　ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を求めているが、ロシアは強く反対し、ロシア周辺国へのNATO軍配備や周辺での軍事演習も止めるよう要求した。

プーチン氏が本当に侵攻するかどうかは分からない。

　来年秋の中国共産党大会で総書記3選を目指す習氏にとって「北京五輪の成功」は、絶対条件であるからだ。

習氏は北京五輪の華々しい成功を背景に、独裁体制を万全にしたい。

ウクライナ侵攻で世界が騒然となったら、それが怪しくなりかねない。

　侵攻するとしても、五輪後にするよう、習氏はプーチン氏を説得するのではないか。

前例もある。2014年のクリミア侵攻が表面化したのは、ロシアのソチ五輪が閉幕した14年2月23日の直後だった。プーチン氏が国境付近での軍事演習を命じたのは、26日である。

　ロシアにとってのウクライナは、中国にとっての台湾と似ている。プーチン氏は、ロシア大統領府の公式サイトに寄せた長文の論文で「ロシア人とウクライナ人は歴史的に一つの統合体」と位置づけている。

中国が「中国と台湾は一つ」と呼ぶのと、ほとんど同じだ。

　この点は、先のオンライン首脳会談でも、にじみ出た。

12月7日付のニューヨーク・タイムズによれば、会談終わり近くになって、プーチン氏は「今回の危機に賭けられた賭け金(stakes、利害関係)は、米国よりもロシアの方がずっと大きい」と強調した、という。

　なぜなら、ロシアはウクライナを「正当なロシアの一部」とみなしているのに対して、米国は「プーチン氏が冷戦後の線引きを書き直すのを認めれば、4000万人のウクライナ人を専制主義政府の支配下に追いやってしまう、と懸念しているだけだから」という。

　まさに、これは中国と米国の関係にも言える。

中国は台湾を自分の領土とみなしているが、米国は台湾の自由と民主主義を心配しているのだ。

　2点目。バイデン大統領はロシアがウクライナに侵攻すれば、経済制裁で対応する方針を明確にしている。

8日には記者団の質問に答えて「米軍の戦闘部隊をウクライナに派遣する意図はない」と明言した。

　これを聞いて、安心したのはプーチン氏だけではない。

習氏もほくそ笑んだことだろう。

NATO同盟国のすぐ近くにロシアが武力侵攻しても、米軍は出てこないなら「台湾に侵攻しても、同じではないか」と、習氏が考えたとしてもおかしくない。

　私は「月刊Hanada」1月号で詳述したが「中国が台湾に侵攻しても、米軍は出てこない可能性が高い」と考えている。

それから「台湾問題で米国人の死者が出たわけではない」のが、2つ目。

「アフガニスタンから撤退したばかりの米国は、戦争疲れしている」のが、3つ目だ。

　この問題は12月26日発売の同誌2月号でも、あらためて論じた。

ご関心の向きは、ぜひご参照いただきたい。

対ロ経済制裁の先にあるもの

　では、バイデン政権はどんな経済制裁を考えているのか。

　ニューヨーク・タイムズなどによれば、欧州の同盟国とともに、ロシア企業の国際市場に対するアクセス制限、ロシア高官や民間エリート、オリガーキと呼ばれる政商や新興財閥に対する金融制裁、さらには、ロシアを国際的な送金システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から締め出す案などが検討されている、という。

　理屈の上では、ドルとルーブルの交換停止もあるだろう。そうなれば、ロシアは西側経済圏から完全に遮断されてしまう。

　これらの経済制裁が興味深いのは、それがそのまま対中制裁案の下敷きになるからだ。

もしも中国が台湾に侵攻した場合、米軍が出動しないなら、経済制裁は必至だ。

そのとき、対ロ制裁の内容が同じように、中国に適用される可能性が高くなる。

　中国が昨年、香港を「陥落」させたとき、一部では「香港ドルと米ドルの交換が停止されるのではないか」という見方が飛び交った。

実際には発動されなかったが、理屈の上では、いまでも可能である。

　ウクライナ危機の展開は、台湾危機に直結する。

当分は目が離せない。

馬鹿は馬鹿なこと考えるのやめるべき