【暇つぶしに】 太宰ふが治「人間ひっ格」 【どうぞ】

1 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:43:52.842 ID:F4bxZHnXr
【\(^o^)/】

第一のひゅ記

 虫歯の多い生涯を送って来ました。

2 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:44:24.599 ID:A5NjejlU0
フガフガ定期
3 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:44:39.650 ID:8vviS3gh0
なんだこのスレ
4 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:44:44.158 ID:lyatWJjM0
なんかワロタ
5 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:45:47.715 ID:opJcOOW4a
まあちょっとウケた
ちょっとだけな
6 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:46:58.222 ID:F4bxZHnXr
自分には、健康な歯というものが、見当つかないのです。
自分は東北の田舎に生れましたので、歯科医院をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。
自分は歯医者のブリッジを、上あご、下あご、そうしてそれが歯間をまたぎ越えるために造られたもの
だという事には全然気づかず、ただそれは地方出の口内を外国の遊戯場みたいに、複雑に楽しく、
ハイカラにするためにのみ、施工せられてあるものだとばかり思っていました。
しかも、かなり永い間そう思っていたのです。ブリッジの上あご下あごは、自分にはむしろ、
ずいぶん垢抜けのした遊戯で、それは歯医者のサーヴィスの中でも、最も気のきいたサーヴィスの一つだと思っていたのですが、
のちにそれはただ空いた歯間をまたぎ越えるための頗る実利的な差し歯に過ぎないのを発見して、にわかに興が覚めました。
9 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:48:24.647 ID:1mOMdreO0
>>6
駅の歩道橋のくだりか
12 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:52:14.191 ID:F4bxZHnXr
>>9
ひょくわがったね
15 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:53:00.207 ID:1mOMdreO0
>>12
フガ治は知らんが治好きだからな
7 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:47:28.619 ID:1mOMdreO0
フガってるwww
8 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:48:08.529 ID:F4bxZHnXr
また、自分は子供の頃、絵本で銀歯というものを見て、これもやはり、
実利的な必要から案出せられたものではなく、そのままの色よりは、
ハイカラな色に塗ったほうが風がわりで面白い遊びだから、とばかり思っていました。
 自分は子供の頃から歯痛持ちで、よく寝込みましたが、寝ながら、敷布、枕のカヴァ、
掛蒲団のカヴァを、つくづく、つまらない装飾だと思い、それが案外に実用品だった事を、
二十歳ちかくになってわかって、人間のつましさに暗然とし、悲しい思いをしました。
10 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:49:22.078 ID:F4bxZHnXr
また、自分は、歯を磨くという事を知りませんでした。
いや、それは、自分が身だしなみに困らない家に育ったという意味ではなく、そんな馬鹿な意味ではなく、
自分には「歯を磨く」という感覚はどんなものだか、さっぱりわからなかったのです。
へんな言いかたですが、汚れていても、自分でそれに気がつかないのです。
小学校、中学校、自分が学校から帰って来ると、周囲の人たちが、それ、おなかが空いたろう、
自分たちにも覚えがある、学校から帰って来た時の空腹は全くひどいからな、甘納豆はどう?
カステラも、パンもあるよ、などと言って騒ぎますので、自分は持ち前のおべっか精神を発揮して、
おなかが空いた、と呟いて、甘納豆を十粒ばかり口にほうり込むのですが、
そのあとの歯磨きは、どんなものだか、ちっともわかっていやしなかったのです。
11 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:51:48.689 ID:F4bxZHnXr
自分だって、それは勿論、大いにものを食べますが、
しかし、歯磨きの億劫さから、ものを食べた記憶は、ほとんどありません。
めずらしいと思われたものを食べます。豪華と思われたものを食べます。
また、よそへ行って出されたものも、無理をしてまで、たいてい食べます。
そうして、子供の頃の自分にとって、最も苦痛な時刻は、実に、自分の家の食後でした。
13 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:52:38.482 ID:SZzCtEecp
上の歯は、死にました。そうして、下の歯だけ助かりました。
14 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:52:58.838 ID:F4bxZHnXr
めしを食べなければ死ぬ、という言葉は、自分の耳には、ただイヤなおどかしとしか聞えませんでした。
その迷信は、(いまでも自分には、何だか迷信のように思われてならないのですが)
しかし、いつも自分に不安と恐怖を与えました。人間は、めしを食べなければ死ぬから、
そのために働いて、めしを食べなければならぬ、という言葉ほど自分にとって億劫で、
そうして脅迫めいた響きを感じさせる言葉は、無かったのです。
16 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:53:59.440 ID:8vviS3gh0
これ序盤くらいしか書けないだろwww
20 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:55:48.019 ID:F4bxZHnXr
>>16
ひょ盤だけ書き溜めてるお
17 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:54:04.488 ID:F4bxZHnXr
つまり自分には、歯磨きというものが未だに何もわかっていない、という事になりそうです。
自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安、
自分はその不安のために夜々、転輾し、呻吟し、発狂しかけた事さえあります。
18 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:55:25.224 ID:F4bxZHnXr
自分は、いったい幸福なのでしょうか。
自分は小さい時から、実にしばしば、仕合せ者だと人に言われて来ましたが、
自分ではいつも地獄の思いで、かえって、自分を仕合せ者だと言ったひとたちのほうが、
比較にも何もならぬくらいずっとずっと安楽なように自分には見えるのです。
19 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:55:34.894 ID:CY5UuKSQd
駅の件か
本家思い出してきた
21 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:57:04.621 ID:F4bxZHnXr
自分には、虫歯が十個あって、その中の一個でも、隣人が脊負ったら、
その痛みだけでも充分に隣人の生命取りになるのではあるまいかと、思った事さえありました。
 つまり、わからないのです。隣人の痛みの性質、程度が、まるで見当つかないのです。
インプラントの痛み、ただ、めしを食えたらそれで解決できる痛み、
しかし、それこそ最も強い痛苦で、自分の例の十個の虫歯など、吹っ飛んでしまう程の、
凄惨な阿鼻地獄なのかも知れない、それは、わからない、しかし、それにしては、よく自殺もせず、
発狂もせず、絶望せず、屈せず生活のたたかいを続けて行ける、苦しくないんじゃないか?
違う歯になりきって、しかもそれを当然の事と確信し、いちども歯医者を疑った事が無いんじゃないか?
22 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:58:24.781 ID:1mOMdreO0
俺的に良スレ
続けてくれ
23 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:58:25.798 ID:F4bxZHnXr
それなら、楽だ、しかし、人間というものは、皆そんなもので、またそれで満点なのではないかしら、
わからない、……夜に磨いて眠り、朝起きてまた磨くのかしら、どんな風に過ごしているのだろう、
道を歩きながら何を考えているのだろう、費用?
24 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 18:59:21.906 ID:F4bxZHnXr
まさか、それだけでも無いだろう、人間は、めしを食うために生きているのだ、
という説は聞いた事があるような気がするけれども、金のために生きている、
という言葉は、耳にした事が無い、いや、しかし、ことに依ると、……いや、それもわからない、
……考えれば考えるほど、自分には、わからなくなり、自分ひとり全く変っているような、
不安と恐怖に襲われるばかりなのです。
25 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2019/12/23(月) 19:00:29.238 ID:F4bxZHnXr
自分は隣人と、ほとんど会話が出来ません。総入れ歯なのです。
 そこで考え出したのは、パビナールでした。
それは、自分の、歯痛に対する最後の希望でした。自分は、痛みは極度に恐れていながら、
それでいて、歯医者を、どうしても思い切れなかったらしいのです。

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