明日、銀行の個人営業の若い女の子がＮＩＳＡとかｉＤｅＣｏの説明しに家に来てくれるんだけど、準備するべきことを教えろ

https://mainichi.jp/articles/20201119/k00/00m/040/073000c

「女帝」と呼ばれた第一生命職員異様な影響力で集めた19億円

第一生命保険の営業職員だった女性（89）が顧客24人から計19億円超を不正に集めていた問題は、被害額の大きさに驚かされるだけではなく、顧客の信頼を得ていった経緯など不可解な点が多い。謎に迫ろうと取材を進めると、地元で「女帝」と呼ばれるほど政財界に食い込んだ元職員の異様な影響力が浮かび上がってきた。
2016年2月末、山口県周南市の神社の境内にある会場で、とあるパーティーが開かれた。詰めかけたのは市長経験者や金融機関幹部ら大勢の地元有力者だ。それほどの面々を集めた主役は、政財界の重鎮ではなく、第一生命の営業職員（当時）。彼女の勤続50周年を祝う会だった。「選挙応援にも精力的で、地元の政財界で有名」だった元職員の人脈を見せつけるような場だったと、出席した地元議員は振り返る。
元職員は周南市出身で1965年に第一生命入社。多くの営業職員と同じように地域限定で採用され、転勤はなく50年以上にわたって山口県内で保険を販売していた。成績は全国に約4万4000人いる第一生命の営業職員の中でもトップクラスを誇った。生保業界で優れた営業成績を残した人だけが会員登録できる国際団体「MDRT」（ミリオン・ダラー・ラウンド・テーブル）にも名を連ねたほどだ。

第一生命保険の元営業職員が顧客から不正に19億円超を集めた問題で、記者会見する被害弁護団の山口広弁護士＝東京都千代田区で2020年11月17日午後4時9分、三上剛輝撮影
第一生命の説明によると元職員は在職中の02～20年、顧客に対して架空の金融取引を持ちかけ、顧客24人から計19億5100万円の現金を不正に預かった。元職員は顧客に「（保険営業の）成績優秀者のみに認められた高い利子がつく私専用の特別枠がある。特別枠に空きがあるので、私に預けないか」と誘い、ほとんどの場合は現金で直接受け取っていた。その際、元職員が手書きした「お預かり証」に収入印紙を貼って顧客に渡していたという。
複数の地元関係者に取材すると、この問題の異様さが具体的になってきた。元職員は金利を「年10～30％ほど」と顧客に説明していた。常識的には疑わしいが、元職員は「弁が立つ人物」で、会話の端々に地元選出の国会議員や財界の重鎮らの氏名をちりばめつつ、自身が第一生命から優遇されていると強調して信頼を得ていたようだ。顧客が難色を示すと、「これはこれまでの恩返し」「どうしてもあなたを（特別枠に）推薦したい」と執拗（しつよう）に食い下がったという。
山口銀行員の紹介で大口契約
元職員はどうやって地元政財界に影響を及ぼすようになったのか。元職員は入社の数年後に親しくなった山口銀行の男性行員から部下や取引先を紹介され、大口の契約につなげていった。出世コースを歩んだ男性が90年代初めに同行頭取に就任した後も、営業先を紹介してもらう関係は続いた。元職員は同行内で「女帝」と呼ばれるほどになり、男性が頭取だった頃には「元職員に顧客を紹介することがノルマの一つで、（行員の処遇の）評価材料にもなっていた」。「お金と権力がある相手に食い込むのがうまかった」という元職員は、地域を代表する金融機関を足がかりに地元政財界の人脈を広げていった。
屈指の営業成績を誇った元職員を第一生命は優遇した。通常は定年を迎える65歳を過ぎても75歳まで再雇用は可能で、その後は1年ごとの更新で80歳まで勤務できる。ところが、元職員は80歳を過ぎても「上席特別参与」といった肩書で営業を続けた。85歳からは元職員のために用意された「特別調査役」を名乗り、懲戒解雇される20年7月まで続けた。特別に肩書を用意してまで元職員を雇用していた理由について、第一生命は「契約件数が多く、引き継ぎを終えることが難しかった」と釈明するが、多くの生保関係者は首をかしげる。
11月17日に結成された被害弁護団によると、元職員は名刺の裏側に「第一生命は特に優れた営業職員で、最高栄誉賞の金の盾受賞者に上席特別参与の称号を付与している」と記し、拡大コピーも持ち歩いていたという。
生保業界の関係者は「ここまで野放しにした第一生命の責任は重い」と口をそろえる。第一生命は17年に元職員の不審な動きに関する情報を外部から得たが、本人も含めて関係者がいずれも否定したため調査は終了した。その後も、元職員の顧客が第一生命から資金を借りる制度を利用する件数が増えている、といった情報が同僚から社内の上部組織に報告されたが、問題視されなかった。
元職員を知る地元関係者は「気に入らないことがあると長時間の叱責や苦情を繰り返す人で、積極的に関わろうとする人は少なかった」と明かす。被害弁護団長の山口広弁護士は「元職員の定期的な内部監査をせず、起こるべくして起こった事件だ」と指摘する。