【アメリカ】ハリス副大統領候補「黒人女性で初」報道の違和感

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ハリス氏は中南米ジャマイカ人の父とインド人の母のもと、オークランド（カリフォルニア州）に生まれました。両親とも1960年代に留学生として米国に渡ってきた移民です。ハリス氏が7歳のときに両親は離婚。その後は母と暮らし、インド南部に住む母方の家族の影響も受けて育ちました。

　◇オバマ氏と似た生い立ち

　ハリス氏の生い立ちはオバマ前大統領と似ていると言われます。オバマ氏はケニアからの留学生だった父を持ち、両親の離婚後に主に過ごしたハワイでは、白人の母とその家族に育てられました。

　2人とも米国の黒人の主流である「奴隷制の時代にアフリカから米国に連れてこられた人々」を直接のルーツに持ちません。そして黒人の父と離れ、育ての親である母の影響を強く受けています。

　それだけに、ハリス氏が黒人のための高等教育機関をルーツとする名門、ハワード大学に進学したのも、オバマ氏が大学卒業後、シカゴの貧しい黒人街で仕事を始めたのも、どこか共通したものを感じます。自分の中にある「黒人としてのルーツ」を探し求めたのではないでしょうか。

　米国の人種（race）は黒人と白人の構図で捉えられがちでしたが、現在はより多様で複雑になり、一言で「自分が何者か」を表現するのは難しくなりました。ハリス氏はこの多様性（diversity）の正にシンボルと言えます。

　◇差異ある人との共感

　ハリス氏が上院議員に立候補した2016年、州下院に立候補した私の夫と合同で選挙集会を開いたことがあります。実際に会うと、日本から来たマイノリティ移民である私は、ハリス氏に「心地よさ」「つながり」を感じました。

　それは、ハリス氏がインド人の母を持つというアジア的な要素からだけではありません。多くの移民が通るアイデンティティーの模索、移民としての試練と苦難を、ハリス氏が「自身の経験」として理解しているからなのです。差異ある人と共感できる経験や資質を持つことは、人種・移民問題で揺れる今の米国に必要なリーダー像です。

　また、ハリス氏の夫はユダヤ系の白人で、ハリス氏はその連れ子たちと混合家族（blended family）を築いています。子どもたちからは「ママラ（ママ＋カマラ）」と慕われ、彼らも選挙運動をサポートしています。カリフォルニア州ではよく見られる混合家族ですが、ハリス氏は米国の「多様な家庭のあり方」も、先駆者として体現しているのです。

　◇多人種、多文化社会の米国へ

　11月の大統領選をバイデン氏は「米国のソウル（魂）を求める選挙」と位置付け、米国の向かうべき姿を「過去」と「未来」に分けて明確なメッセージを発信しました。

　「過去」とは、トランプ政権による人種・移民・マイノリティーへの強硬で閉ざした姿勢を意味します。大統領はメキシコからの移民を「犯罪者」、黒人男性の暴行死を機に広まったブラック・ライブズ・マター（BLM）運動を「憎しみの象徴」などと呼びます。

　コロナ禍で日本人を含むアジア系へのヘイトクライムがどんなに報告されても、新型コロナを「中国ウイルス」などと蔑称し、スケープゴートにすることもやめません。

　これに対抗する「未来」は、バイデン氏が導く「多人種、多文化社会の米国」です。コロナ禍やそれに伴う経済危機、人種に基づく不公正や差別などで傷ついた米国を立て直し、全ての人に開かれた国を目指します。

　◇“白人”が少数派になる日

　米国勢調査局の予測（2015年）によると、米国では40年代半ばには、非ヒスパニックの白人が人口の半数以下になります。ラテン系、黒人、アジア系などのマイノリティーと言われるグループが、人口の半数以上を占めるようになるのです。これは米国にとって何を意味するのか。

　すでにマイノリティーが人口の多数を占めるカリフォルニア州（18年の調査でラテン系39％、白人37％、アジア系15％、アフリカ系6％）は、そんな米国の未来に多くの示唆を与えます。

　ですから「黒人女性で初」といった断面的な捉え方では、ハリス氏が選ばれたことの本質を見失います。複数の人種にルーツを持ち、多人種、多文化の社会を形成するカリフォルニア州で生きてきたハリス氏だからこそ、いま変容を求められる国政に、その経験が生かせるのです。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/3711c1c1c3b8ba8d1dc4c3e0ada9973ca292895d