アラブ人「イギリスとの協定から」 ヨルダン「パレスチナ問題の経緯」

サムネイル
1 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:01:05.250 ID:jItz276u0
ーー1915年 アラビア半島 メッカーー

フサイン「ようやく応じる気になったか」

密使「戦後のアラブ世界をまとめあげるには、聖地メッカを治める太守のように高貴なお方が必要と考えております」

フサイン「そのかわりにオスマンを叩け、と。期待には応えると伝えよ」

密使「かしこまりました」

アリー「父上、あの男が例のイギリス人ですか」

フサイン「マクマホンとの話を進めていてな。新しい条件を出してきた」

アリー「シリアのダマスカスとアレッポを結ぶ線より西は純粋なアラブの地と呼べない、とありますな。シリアの西といえば」

フサイン「エルサレムは我々に渡さんつもりだろう。まぁいい、弟たちを呼べ。支度にかかるぞ!」

2 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:03:08.544 ID:jItz276u0
アラビア半島の西側海沿いの地域にはイスラム教最高位の聖地メッカとメディナがあり、オスマン帝国支配下にありながら自治権を持っていた。
ここでフサインとイギリスとの協定がご存知フサイン=マクマホン協定なのだけど、これはよく
「イギリスがパレスチナ人に独立を約束した」とか
「イギリスがアラブ人にパレスチナ独立を約束した」と説明される。
しかし現在のパレスチナ(オスマン帝国支配当時はシリアと呼んだ地域の一部)は除外されていた上に、フサインはアラブ人ではあってもパレスチナ人でもなんでもない。

この話にパレスチナが関わってくるのはもう少し先のことになる

3 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:06:23.166 ID:jItz276u0
翌1916年

フサイン「我が領地をヒジャーズ王国として独立させたが、私ももう年だ。これから手に入れる地は息子のお前たちに任せたい」

長男アリー「しかし、オスマン軍の抵抗も大したことはありませんな」

三男ファイサル「ヒジャーズ以外のアラブ人も志願してくるし、なによりイギリス人のよこした機関銃とは便利なものよ。一丁で兵100人分の弾を撃てる」

次男アブドゥッラー(その分、危険に晒す兵を減らせるのは良いが)

アブドゥッラー(イギリス人と事を荒立てれば、今度は我々がこれを向けられるというわけか……)

海沿いのヒジャーズ王国から内陸の方はオスマン帝国の支配地域から外れる、
フサインと4人の息子たちは、アラビア半島の根本へと北上していった。
破竹の快進撃を続けていくフサインたちであったが、
『ヒジャーズ』という、なんか聞き慣れない国名
しかもフサインたちの治める地にあるメッカは、現在のサウジアラビア

そう聞いてだいたいお察しの通り、このヒジャーズ王国はのちに滅びる。

4 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:09:07.245 ID:jItz276u0
フサイン「反乱の結果、アブドゥッラーとファイサルは自前の領地を持てて」

アリー「父上は全アラブ人の王というわけですな」

フサイン「まぁ、それくらいは名乗る権利があるというものだろう。集まった志願兵は結局数千人、それにイギリスはこの戦でオスマンに勝つだろう」

アリー「イギリスの上陸に際し、我々もだいぶオスマンの兵を引きつけましたからな」

フサイン「いずれはカリフの座も、我がハーシム家に取り戻してみせるぞ!」

ーー1920年ーー
アリー「やはりオスマンは破れましたな」

フサイン「これで脅威は去った、が……」

アリー「それはイギリスにとっても同じこと。反乱の頃は気前良かった支援も徐々に減り、ついには切られてしまいました」

フサイン「ま、まぁそれは戦争が終われば当然のことだ…… あまりイギリス人に頼ってばかりもいられないな」

この1920年は、オスマンとの講和とは別のところで大きな問題が起こり、フサインのヒジャーズとイギリスのとの関係は、反乱中ほどではなくなることになる。
かといって決別するほど冷え込むわけでもなく、共にオスマン帝国と戦った時のような手厚い支援がなくなったのは当然と言えるかもしれない。

5 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:10:28.627 ID:jItz276u0
ーー1922年 トルコ共和国 イスタンブールーー

元オスマンの皇帝「共和制になって、皇家も終わりか……」

元皇太子「これからどうしましょ」

議会「とはいえ、国民には皇家と完全に縁を切るのは名残惜しいという声もあります。元皇太子殿下はカリフの地位へどうぞ」

元皇太子「私がカリフとな」

議会「ええ、政治的な権限はなし、カリフの権威だけという形で」

元皇帝「では私も……」

議会「あ、元陛下にはイギリス軍が亡命用の船を用意してます」

元皇帝「56すぞ」

6 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:11:38.806 ID:jItz276u0
さっきから何度か挙がってる『カリフ』ってなに? というと
元々は「後継者」の意味で、イスラム教徒が特に『何の』かと指定せず後継者と言った場合、イスラム教の創始者ムハンマドの後継者のことになる。
宗教上の最高指導者の立場にあるえらい人なのだ。
ただ、トルコ共和国初代大統領が最後のカリフへの手紙でハッキリ釘を刺しているように、共和国では特に何の権限も持たなかった。
7 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:13:14.753 ID:jItz276u0
ーー2年後の1924年ーー

議会「我が共和国も近代化の波にのり、政教分離の原則を取り入れることにしました」

元皇太子「政治と宗教を分離、ということか」

議会「つきましてはカリフ制を廃止しようかと。あ、元皇太子殿下の共和国出禁もセットで」

元皇太子「56すぞ」

亡命先の元皇帝(息子よ… こっちへくるのだ……)

このトルコのカリフ制廃止が、直後にとてつもない(とは言ってもトルコは何の非もない)悲劇を起こす事になる。

8 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:14:27.144 ID:jItz276u0
ーーヒジャーズ王国ーー

アリー「トルコはカリフ制を廃止したようです」

フサイン「アラブ人ですらない連中がカリフを名乗ることなど、あってはならなかったのだ。その座は預言者ムハンマドの祖父から連なる我がハーシム家にこそふさわしい」

アリー「……やりますか」

フサイン「作り話までして簒奪した異民族から、本来の持ち主に還るのだ! 全てのアラブ人が喜び、本来のカリフ復活を歓迎するであろう」

ーーとなるはずだった。

アラブ人の王。これはまだ問題なかった。自称王様なんてどこにでもいる。
しかし、カリフとなると話は別となる。それほど当時のイスラム教徒にとっては特別な地位なのだった。

9 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:16:08.346 ID:jItz276u0
フサイン「……カリフ宣言を認める報せは」

アリー「来てません」

フサイン「百歩譲って、旧オスマン帝国支配地域外から認められないのはまだわかるとしよう」

フサイン「しかし我々の反乱で解放されたシリアからは!?」

アリー「来てません」

フサイン「アブドゥッラーとファイサルの領地からは!?」

アリー「来てません。まぁ今はイギリス委任統治領なので、事情があるのでしょう…… あ、一件だけきてました」

フサイン「おお来たか! 誰からだ!?」

アリー「オスマン最後の皇帝、メフメト六世からですな」

フサイン「あいつか! いらんわそんな認定!」

アリー「手紙によると、公務から解放されてマルタ島生活エンジョイしてるようですね」

フサイン「そうはなりたくないものだな……」

10 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:19:03.193 ID:jItz276u0
フサイン「しかし何故だ!? カリフといえばイスラム世界最高位の称号」

フサイン「それをメッカとメディナを抑えるハーシム家が取り戻したというのに!」

アリー「なぜこんな独り相撲… あ、いや空回りした感じに……?」

フサイン「お前それ言い直す意味あるか?」

フサイン「正直なところ、ヒジャーズの民からもあまり評判は良くないようだ」

アリー「それは父上が重税をかけすぎだからでは」

フサイン「オスマンに簒奪されてから数百年、もうカリフの権威はアラブ世界から忘れられてしまったのか……」

アリー「それならまだいいのですが、不穏な情報も入っております」

アリー「それも東の隣国ナジュドから」

11 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:22:16.547 ID:jItz276u0
ーーヒジャーズの東の隣国ナジュドーー

サウード「トルコが手放した途端にカリフ宣言か…」

サウード「老いぼれめ、オスマンの次はイギリス人に媚を売ったかと思えば」

宰相「あの自称カリフ、我がナジュドの民をメッカへの巡礼から締め出し始めています」

サウード「神聖なメッカの地は、耄碌した身の程知らずに任せておいて良いものではないな」

宰相「我らナジュドをおいて他に、この愚行を止められる軍はありませぬ。ご決断を」

ナジュドというのもヒジャーズと同じく聞き慣れない国名だが、こちらは後に『サウード王家が治めるアラビアの国』を意味するサウジアラビアに改名する。
この話の最初の方でも触れたように、現在ヒジャーズ地方を領有するサウジアラビアである。

ということは

12 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:24:33.362 ID:jItz276u0
ーーカリフ宣言から半年後ーー

フサイン「ナジュドにこれほどいいようにされるとは、情けない……」

アリー「敵は7倍の戦力を送り込んできています。撤退しましょう」

フサイン「アブドゥッラーとファイサルは何故援軍の一つもよこさんのだ!?」

アリー「二人とも今はこのヒジャーズを離れ、それぞれの国を起こす大事な時です」

フサイン「イギリス人どもも、用が済めば冷たいものよ…」

フサイン「西のジェッダに撤退するぞ! 体制を立て直す!」

13 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:25:49.378 ID:jItz276u0
ーージェッダからさらに北の街アカバーー

フサイン「ふぅ、とうとうヒジャーズをぬけて来てしまった」

フサイン「ここは今…… パレスチナといったか?」

アブドゥッラー「ヨルダン川の東側はトランスヨルダンです、父上」

フサイン「民からもせがまれて、アリーに譲位して来た。しばらく匿ってもらうぞ」

アブドゥッラー「それが……」

英弁務官「ナジュドのサウード王から通達がありましてな」

フサイン「イギリス人か。どうした」
(当時ヨルダンはまだイギリス委任統治領)

14 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:30:46.593 ID:jItz276u0
第一次大戦後
現在のイスラエル・パレスチナ・ヨルダンを含む地域はイギリス委任統治領パレスチナ、
つまりイギリスが主導していずれ独立させる土地となっていました。
イギリスはそのパレスチナを、ヨルダン川の西と東で分割、
東側はフサインの息子アブドゥッラーを王とするトランスヨルダンとしました
(トランスヨルダン、というのはヨルダン川の向こう側という意味)

この話には関わってきませんが、トランスヨルダンの東は委任統治領メソポタミア、現在のイラクです

15 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:32:31.240 ID:jItz276u0
英弁務官「あの自称カリフをアラブ世界に置いておくな、とのことです」

アブドゥッラー「我々もまだまだ国を興している最中です。ナジュドと戦える力は整っておりません」

アブドゥッラー「それに川の向こうにはヨーロッパを追われたユダヤ人たちもいます」

フサイン「これ以上の揉め事は起こせない、か」

英弁務官「脱出用の船を用意してあります。パレスチナから地中海へ出て、キプロスへ逃れられるのがよろしいでしょう」

フサイン「……アブドゥッラーよ」

アブドゥッラー「はい」

フサイン「馬をくれぬか…… アラビアの馬がいい……」

アブドゥッラー「御用立ていたします」

16 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:35:29.685 ID:jItz276u0
ーー1927年ーー

サウード「ではアリー・イブン・フサインに代わり、私がヒジャーズ王も兼任すると。よろしいな?」

英「ではサインを」

アリー(こいつら、たかだか10年前は父上を応援しててこれだ……)

この数年後の1932年にナジュドはサウジアラビアに国号を変更する

フサイン=マクマホン協定を受けて建国したヒジャーズ王国は、ナジュドとの連合王国構成国から、後にサウジアラビア王国の一地方となり、16年(サウード支配までで数えると11年)という国家としては短すぎる歴史を終えた。

17 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:37:28.614 ID:jItz276u0
ーーキプロス島ーー

島民A「あのアラビア馬の家の人が王様って、本当なのか?」

島民B「いい人だよ。珍しいアラブの話を聞かせてもらったことがある」

島民A「御隠居の身ったってなぁ、俺たちにも恵んでくれないもんかね」

島民C「よせよせ、時々息子たちが会いにくるんだけどよ、あら金借りに来てるんだろう。そういう話にくたびれてるはずだ」

島民B「それにあの人、オスマンに反乱を起こした大将だっていうぜ」

島民A「へぇ、そりゃあ俺もお目にかかってみたいもんだ」

18 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:39:00.152 ID:jItz276u0
詩人「いかがですかな、ここでの暮らしは」

フサイン「悪くない。島民は私によくしてくれるし、馬もいる」

フサイン「息子たちもたまには顔を出すし、今日のように客人もある」

詩人「それはなによりです」

フサイン「どうだ…… また昔のように詩を聞かせてはくれんか」

詩人「遊牧民たちの古い詩を仕入れてまいりました」

19 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:42:38.254 ID:jItz276u0
ーーそれからさらに数年後 サウジアラビア リヤドーー

英「お気持ちはごもっともですが」

サウード「……もう長くはないのか」

英「一命はとりとめましたが、半身の麻痺が残りました」

英「最期の数年となるでしょう。せめてアラブの地で過ごさせてほしいのです」

サウード「生まれ故郷のメッカに入れるわけにはいかん」

サウード「だが…… 地中海のキプロスからトランスヨルダンに何を運び込もうが、余もその中身までは言い当てられんな」

英「寛大なお心遣いに感謝いたします」

フサインはヨルダンの首都アンマンに受け入れられ
翌年、エルサレムに埋葬された。

20 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:44:11.672 ID:jItz276u0
これまでヒジャーズ編
ここからヨルダン・パレスチナ編になります
21 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:46:47.031 ID:jItz276u0
ーー少し時代は少し遡って1921年 イギリス委任統治領パレスチナーー

アブドゥッラー「…つまり弟のファイサルにはメソポタミアを与えると」ビキビキ

英(どうしようすごい機嫌悪いぞ……)

英(戦後のアラブ地域分割で、ダマスカスはウチの担当じゃないって言っときゃよかった…… まさかあそこまで進撃するとは)

英「殿下にはこのパレスチナの地を治めていただきたいのです」

英「ただしヨルダン川の東側を領地とします」

アブドゥッラー「父上にもエルサレムは渡さぬつもりだったようだな。プロテスタントがあの地に何の用だ?」

英「エルサレムにというわけではないのですが、ユダヤ人のナショナルホームを建設します。しかしご安心を、奴らには殿下の領地には手出しさせません」

23 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:49:15.889 ID:jItz276u0
アブドゥッラー「そのナショナルホームというのはなんだ?」

英「ご存知の通りユダヤ人は世界中で迫害されております」

アブドゥッラー「『世界中で』と言うな。中東ではユダヤ人もアラブ人と共存して来た長い歴史がある」

アブドゥッラー「しかも迫害してるのはお前たちだろう。どの口が言うか!」

英「そのユダヤ人のふるさとと言うべきものが必要と考えまして」

アブドゥッラー「ほぅ、ユダヤ人の国を作ると」

英「いえ、『国』とは書いておりません。あくまでナショナルホームとして…」

アブドゥッラー「…国ではないと? ユダヤ人に居場所を用意するのではないのか?」

英「いえ、『ナショナル』ホームというくらいですのでそこはこう……」

アブドゥッラー「ハッキリせんか! どっちなんだ!?」

27 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:52:37.105 ID:jItz276u0
>>23の続き

『ナショナルホーム』というのはおそらくハッキリ「国家」を表す言葉を避けるための仕込みだと思われる。
国家じゃなけりゃ何ができることになってたんだろうか。
その辺はちょっとよくわからない。

それにしても、フサイン=マクマホン協定とサイクス・ピコ協定とバルフォア宣言と
戦争中から、自分が負ける前提の話が周り中で進んでたオスマンの気持ちとは

26 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:51:43.383 ID:jItz276u0
何が起こったんだ……?
28 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:54:05.891 ID:jItz276u0
アブドゥッラー(いろいろ言いたいことはあるが、イギリスを敵に回すのも賢くないな)

アブドゥッラー(特に今はこのトランスヨルダンを盤石にすることに専念しよう)

アブドゥッラー(なにしろまだイギリス委任統治領。本格的な独立を目指さなくては)

ーー1924年ーー
フサイン「…というわけで息子よ、かくまってくれ」

アブドゥッラー「父上… しかし今は、我々もサウードと戦う力はありません。それに、他にも問題を抱えております」

フサイン「シオニストどもか。奴らめ、アラブの地を何と心得るか」

アブドゥッラー「ヨーロッパでの彼らの窮状には胸の痛むものがあります。どうにかしたいものですが」

29 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:57:33.827 ID:jItz276u0
パレスチナには1918年の時点でアラブ人70万人、ユダヤ人5万6千人が暮らしていた。ユダヤ人率7.4%ほど。
それが1931年には17%、5年後の1936年には27%近くにまでなった。

移民がそれだけ増えれば軋轢も起こるというもので、ユダヤ人入植やイギリス統治へ抗議する反乱が起こったりもしている。

また国連ではパレスチナをアラブ人とユダヤ人の居住区を分ける案が採択されたが、これにアラブ人たちは猛反発し、軋轢は凄惨な殺し合いを含む紛争にヒートアップした。

何かが起こるたび、争いを逃れて暮らしたいアラブ人たちは、ヨルダン川を渡る決意を迫られる。
今も続く難民問題の始まりだった。

32 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 22:04:17.665 ID:jItz276u0
イスラエル建国宣言の翌日にアラブ諸国が侵攻を開始、これが第一次中東戦争である。
ーーというのは有名な話だけど、>>29でもちょっと触れたように、国連のパレスチナ分割決議あたりから、住民同士の紛争は激化していた。

混雑する市場やバス停には爆弾が仕掛けられ、人混みがあれば爆弾が投げ込まれ、その報復にいくつもの村が巻き込まれていく。
アラブ人志願兵とユダヤ人の民兵が衝突し、数百人の死者を出す戦闘も起きた。

住民同士の軋轢は『紛争』から、訓練された兵士同士が戦う『内戦』となっていた。

30 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 21:59:16.779 ID:jItz276u0
ーー1948年5月12日 ユダヤ人民管理局会議ーー

「ついに明後日、5月14日にイギリスの委任統治終了の期限が迫っております。それに合わせてユダヤ人国家の建国宣言を行うか、それとも今は目の前の紛争を収めるべきか」

「昨年イギリスの撤退発表以来、事態は悪くなる一方だ」

「いっそアメリカの停戦提案を受け入れるのはどうです?」

「しかし、それで周り中にいるアラブ人たちと話が進むだろうか…?」

「ヨルダンのアブドゥッラー王は信用できます。停戦に応じれば、我々の領土を積極的に奪おうなどとはしない方です」



会議は長引いたが、後のイスラエル初代大統領の、鶴の一声で決まった。

チャイム・ワイズマン「何を待っているんだバカヤロー!」

31 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 22:03:04.908 ID:jItz276u0
建国宣言では、イスラエルではユダヤ人も非ユダヤ人、宗教・人種に関係なく全ての国民が平等の権利を持つこと、周囲アラブ国家との平和的な共存を目指すことが語られた。

それがどこまで本気だったかを知る機会は永久に失われることになる。

33 名前:一般よりも上級の名無しさん 投稿日時:2023/12/15(金) 22:07:28.408 ID:jItz276u0
ーーイスラエル建国宣言から数ヶ月前 シリアーー

士官「パレスチナ内戦へ介入するのですか」

司令「正規軍を送るわけにはいかん。軍務を離れた上で、アラブ連盟の有志と合流してほしい」

士官「そうなることをお待ちしておりました」

司令「仮にもパレスチナの宗主国(イギリス)を刺激することは避けなくてはな。それに、君たちにはもう一つの介入目的を任せたい」

士官「パレスチナのアラブ人救出以外に、でしょうか」

司令「ヨルダン軍が既に介入している。近いうちにアブドゥッラーはエルサレムを抑えるだろう」

士官「エルサレムにはアラブ聖戦軍を名乗るゲリラがいるとは聞いていますが、ヨルダン軍が優勢なのでしょうか」

司令「20年前に故郷ヒジャーズのメッカとメディナを失った男だ。エルサレムに野心を出すかもしれん」

司令「密命である。いざとなれば、アブドゥッラーの兵を討て!」

コメント一覧

タイトルとURLをコピーしました